• 描くことについて

  •  高2で初出品してから美術学校の4年間、絵を描き続けました。
    そして美校卒業後1年間の助手生活で、「このままでは絵描きになれない」と想い、思い切って絵三昧の生活にはいりました。

     最初の一年位は、食生活は苦しかったですがそれなりに楽しい毎日でした。しかし徐々に絵が描けなくなっていきました。同時に自分の絵がどうなっているのか、良いのか悪いのか判定してくれる先生も居ないので、全く解らなくなっていったのです。そんな時にもう一度勉強しなおしてみようと思い立ち、一番興味のある作家の作品の分析を始めました。ところがゴッホの分析をやっているとゴーギャンが気になり、次にロートレック、ブラック、マティスと段々時代を逆さに戻り始め、遂にセザンヌに行きつきそこから動かなくなりました。同時に、人が生きるということはどういうことかと考え始め、そのことが“蟹”の生に対する習性とサラリーマンの電車のすし詰め通勤の状態との類似性を見て蟹の中に人の生き様を、また外形の中にも託してみたりし始めて自分の意志を絵の中に投影させようとしたものでした。ですから蟹の絵から私の絵が始まったと言っていいと思います。
     しかし、それから三年間はいつ死ぬかと思えるほど苦しい生活でした。