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この根っこに至る迄に僅かですが、大樹の存在感に興味を持ち描いた時期があります。
しかしあまり数が少ないため、又どんなに大きな樹でもそれを支えているのはその樹の根ではないかと思い、根っこを描く様になりましたために、この画集には大樹の作品は掲載いたしませんでした。
さて、その根っこですが樹はその高さに等しい位下に根を延ばし、枝の張りと同じ位横に根を張るのだそうです。地上に出ている姿を見ていると私達は心が洗われたり、又癒されたりもしますが、樹がそのようにしていられるには地下で根っこが壮絶な戦いを強いられているわけです。地下には柔らかい気持ちの良い土ばかりではありません。大きな何かの障害物や石ころ、近くに他の樹があればその樹の根との戦い、崖っぷちであれば、その土が崩れ落ちることもあります。そんな中で根っこは地上のものを支えるためにただひたすらに水を求めていくのです。さりとて誰に見てもらえる訳でもなく、見向きもされません。その様なことから、物事の本当の姿と言いますか本質は案外人の目に触れないところに存在しているのではないか、人間同士とて見た目でその人を判断したりしてしまいがちです。何事もしっかりそのものの本質を見極めて後、そのものの判断をすべきですね。そんな事を考え乍ら根っこにいとおしさを持って描いて来ました。